反習近平のアメリカは元国家副主席を熱烈支持(「月刊中国」155号より)

習近平は4月のインドネシアで安倍首相と笑顔で握手した。習近平は変幻自在の笑顔演出で、日中は互恵主義でやって行こうというアピールをしていた。5月23日夜には、北京の人民大会堂で日本から3000人の訪中団を連れてきた自民党の二階俊博と握手して、日中友好を演出した。日本側は習近平の出席は難しいかもしれないと考えていただけに、サプライズ効果はあった。

人民大会堂に350卓のテーブルが並び、最前列のテーブルには自民党二階俊博の名札があり、両脇には李金華(国家旅行局長)、王安順(北京市長)の名札が並んでいた。国家指導者の名札はどこにもなかった。

18時30分、司会者が「携帯電話の電源を切って下さい」と言った直後、大声で「中華人民共和国習近平国家主席の入場です、ご起立下さい」と叫んだ。満場熱烈な大拍手が沸き起こり、習近平・二階俊博・国務院副総理●洋●揚らが主賓席に並んだ。

11分間の習近平の歓迎のスピーチでは、日中間の歴史問題や政治的課題には全く触れることなく笑顔で歓迎したことに、日本からの参加者は感激していた。

習近平政権は2年が過ぎ、「反腐敗」を掲げて政敵を粛清している。自分の家族の海外資産についてはアンタッチャブルにしたまま、いつまで「反腐敗」を続けるのか。

習近平政権はアメリカを名指しで敵対するようになり、南シナ海では24時間体制で埋め立てを続け軍事施設を建設する。そろそろアメリカも日本も我慢の限界が近い。

 

1、アメリカは王岐山の調査を続けて習近平政権を叩く

アメリカの記者が2回連続で「習近平の家族の資産」を暴露して世界中に報道した。最初は2012年6月に報道したもので、習近平一族の巨万の富を暴露した。中共18大会の直前には、習近平の家族は3億7600万ドルの投資をしていたという。

2回目の報道は2015年4月28日にニェーヨークタイムズに出されたもので、習近平の家族が政商として有名な「万遼グループの王建林」と結託して金儲けしている実態を暴露している。

習近平は「反腐敗」を口先では叫んでいるが、自分の家族の資産については王建林(元は軍人)と結託して増やしている。金と力を交換して、頂点にいる者だけが巨万の富を築けるのである。王建林はわずか3年間の活動期間で、アジア最大の富豪になった。香港最大の金持ちだった李義賊を超えたのだ。

万達グループが土地の利益を習近平の姉(斉橋橋)に献上しても、中央規律検査委員会は調査の手を入れることが出来ないめである。この「金と力を交換する」実態を暴露したことで、中共の党内では「反習近平派閥」が勢いづいている。

アメリカにいる中国問題専門家によれば、現状では習近平は「保守派」であり、元副総理の曽慶紅が「改革派」となっているとのことで、党内中間派は「曽慶紅待望論」に傾いているようだ。

アメリカのCIAは、習近平と王岐山の通話記録を全て持っている。盗聴対象として監視し続けている。FBIも彼らを調査対象にしている。アメリカは習近平の「反腐敗」の現実について、全てを暴露するタイミングを見ている。

まずアメリカは、習近平は金とカの交換によって財産を築いている実態を暴露し、政敵を葬るためだけに「反腐敗」を利用していることを証明して、それを中国の世論喚起につなげようとする。

次に、アメリカは中共の党内で最大の力を持つ曽慶紅を支持し、習近平に対立させようとする。

そして、アメリカの各種機関が調査を完了している、習近平指導部の王岐山の腐敗事実を根こそぎ暴露して習近平を孤立させようとする。

アメリカは既に曽慶紅に対して「シグナル」を送っている。アメリカ世論工作も準備完了している。アメリカには「習近平を利用するチャンネル」は閉じられている。

曽慶紅は、ロシアと中共の結託を破壊する可能性が高く、ロシアにとっても中共と一蓮托生する気がないので曽慶紅を歓迎する可能性がある。「新冷戦」を避けようとするアメリカは、習近平政権に全部の負債を背負わせるつもりだ。

王岐山が訪米した時、アメリカの各種機関は王岐山など中共高官35人の電子通信記録を緊急調査している。習近平の盟友であり兄弟分である王岐山がアメリカの調査対象となっていることは、中共党内の「曽慶紅派」にはこれ以上ないほどの栄養剤になっている。

アメリカは習近平や王岐山と一切の取引を禁じている。つまりアメリカは、曽慶紅となら取引するということである。中共党内においては、曽慶紅の復権は「習近平の政治的死刑宣告」と受け取られている。

 

2、江沢民と曽慶紅に公然と裏切られた習近平

中共の権力闘争の現場では、毛沢東は林彪と死ぬまで戦い、鄧小平は江沢民や楊尚昆と死ぬまで戦った。胡錦濤は軍権を握らなかったので、死ぬまで戦うこともなかった。

今年6月4日の天安門大虐殺26周年記念の直前、6月1日には長江(世界一長い下水道と呼ばれている)で観光船が転覆沈没した。何度も不正改造された船で、400人の観光客が死んだ。新華社は「竜巻と暴風雨による」と理由を説明していたが、この観光船以外に転覆した船はいなかった。バカみたいな嘘を平気でつくのが中共である。

現在、中共の党内では「習近平こそ党内最大の裏切り者である」という話が流れている。かなり高層からの話らしい。アメリカ司法当局からも証券監視委員会からも調査されている習近平は、「反腐敗」をいくら進めても白身の政権を維持することは難しくなっている。

習近平が権力を握った後、政敵を「反腐敗」として排除して行ったことを、習近平の次の権力者も同じようにするはずである。

アメリカにいる中国問題専門家の沈大偉は3月に「曽慶紅支持」を発表し、4月に王岐山が訪米する。4月4日にはメディアに「権力闘争の中で、アメリカは中共の中間派が曽慶紅を支持して、習近平から政権を奪取することを奨励する」という文章が発表された。そんな時期に、王岐山は訪米する目的は、アメリカに習近平政権の「反腐敗運動」を支持するか、支持しなくても中立を守ってもらいたいと懇願することである。

海外の中国人メディアは、「王岐山の訪米目的は、郭文貴や令完成などの身柄引き渡しをアメリカ政府に求めるためだ」などと掻いだが、逃亡した郭や令などが習政権に脅威を与えるとは考えられない。アメリカが、中共政権に対しての世論工作力を強めていることの証明かもしれない。

アメリカは戦略的に、中共党内の権力闘争の勝敗決定権を握ろうとしている。習近乎政権を否定する方向性は決まっている。王岐山が訪米してどれほど懇願しようとも、アメリカの戦略がぶれることはない。

王岐山の訪米から2ケ月が過ぎて、アメリカの「反習近平」という態度は世界中に知れ渡るようになった。

5月30日の「アメリカの音」という番組の中の「焦点対話」というコーナーで高文謙は、「王岐山の訪米は習近平の家族が金とカの交換で資産を増やしていることが報道されたことに対する対応であるが、アメリカの司法体系と中共の司法体系の違いを思い知らされただけである。逃亡した郭や令などの腐敗分子の身柄引き渡し交渉などは看板だけの話である。中国の人脈社会では政と商が結び付いて、富と権力を独占する。そんな社会で反腐敗を推進する習近平を支持してはしいとアメリカに頼んでも、それは無駄というものである」と語っている。

6月5日の「博訊」や「北京の春」の報道によれば、訪米した王岐山の通信記録は全てアメリカ安全保障局(NSA)が保存しているようだ。アメリカの戦略的な目的がどこにあるか、どうやら明白になったようだ。

 

3、習近平と王岐山の盟友関係に終止符が打たれるか

どうやら二人の盟友関係に正念場が訪れたようだ。現在の世界は、中共とロシアの連盟がアメリカと対立する「新冷戦構造」が始まろうとしている。

アメリカと中共は、江沢民・曽慶紅の時代には良好な関係だった。戦略的な意味でも、両国関係は安定していた時期である。2013年6月、元NSA職員のスノーデンがアメリカの機密を暴露した。2007年にブッシュ大統領がNSAに命じた「プリズム計画」は、全ての電子情報や通話記録を盗聴するものだった。公式の指示番号はUS-984XNというものである。あらゆるネットサーバーのデータを窃取し、ヤフー、グーグル、フェイスブック、ユーチューズスカイプなど、あらゆるネット情報をアメリカ政府機関が盗んでいたのである。

アメリカのNSAは、通話もメールも動画も全てを監視しているのである。中共の高官たちの情報は、全てNSAに握られているあである。習近平も王岐山も、アメリカに隠し事は不可能となっている。

しかし、このNSAの行為はアメリカの法律に抵触する。違法調査であるため公式には「やっていない」事になっている。

アメリカの司法局や証券監視委員会が王岐山の調査をしていると公表することは、合法部分で犯罪立証が可能ということなのか。土岐山と摩根大通公司との通信記録を調査していることが分かっている。

アメリカは中共中央政治局常務委員たちの通信記録は、完全に掌握している。習近平と直接戦うのではなく、王岐山と戦って追い詰めようとするアメリカの作戦は、中共の党内において、孤立する習近平と曽慶紅とを選択させようとするものであろう。

王岐山は現在、習近平政権では第2位の実力者である。その王岐山をアメリカは、猫がネズミをいたぶるように圧力をかけている。最近では熟睡できない日が続いていることだろう。

中共の権力闘争は「政轍を殺すまで続ける」もめである。中共18大会の前後だけを見ても、中央委員から政治局常務委員までがお互いに政敵であり、青年団派・太子党派・肛沢民派もお互い潰し合いである。

胡錦溝と温家宝・江沢民と曽慶紅・習近平と王岐山も政敵を葬り去ろうと必死である。江沢民も長くはないだろうし、李鵬は301病院に3月から入院中、郭伯雄は逮捕されてガンが悪化。地方閥も重慶から山西常まで潰し合い、中央弁公窒・中央石油部・国家計画委員会能源部・軍事委員会・政法委員会・警備局・安全部に至るまで、その内部は「政敵を葬り去ること」だけが全てになっている。

王立軍が重慶のアメリカ領事館に亡命した事件を発端に、薄麒来・劉鉄男(駐日商務部)・令政策・申維辰・陳川平・谷俊山・岳進(周永康派の国家安全部副部長)・馬建(曽慶紅の腹心で国家安全部副部長)・歌恵昌(国家安全部長)・王慶・宮浦などが「政敵繊滅」の戦いをしていることが表面化した。中共の党内だけでなく、経済人たちも「財敵繊滅」の戦いをしている。王健林(薄熙来と不仲)は郭文貴を繊威しようとしている。暗闘は国内外を問わずに続けられている。

中共中央規律検査委員会が見逃しても、アメリカの当局機関が中共の党内暗闘に干渉して、ケンカを大きくする。中共の17大会でも18大会でも、政敵に葬り去られた代議員は数え切れない。政散に葬り去られれば、もう再起不能になるだけだ。李克強・李源潮・注洋・劉延東・胡春華・韓正(上海市長)・範長龍(6/9に訪米、軍事委員会副主席)・房峰輝・張陽・超克石・呉勝利・親風和・孟建柱・預延安(江沢民派)・呉志明(江沢民派)たちは、自分の任

期満了をもって退任して消えて行く運命を待っている状態だ。

アメリカが王岐山を調査中という政治的圧力で、中共の暗闘のコントロールはアメリカの手にある。アメリカが習近平を直接に葬り去ることは不可能だが、中共の暗闘によって結果的に葬り去ることは可能だ。中共の党内にある「親米派」「反米派」の暗闘もあり、親米派の曽慶紅や韓正などは、アメリカと中共が戦略的合意をして関係課愛染することを望んでいる。

(「月刊中国」155号 2015年8月号より)

 

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