近年、中国経済は急速に発展しており、中国は10年以内にアメリカに取って代わり、世界一の経済大国になると見ている人もいる。中国は現在すでに、世界最大の貿易国であり、世界最大の製造国であり、世界最大の外貨準備高保有国である。だが、人権およびそれに関する方面では、中国の情勢は引き続き悪化の一途をたどっている。
中共は人権を侵害し、民主化運動や権益保護運動を弾圧し、自由・民主・人権・法治などの普遍的価値を否定している。中国の発展の趨勢が矛盾していることは明らかである。
中国経済は急速に発展
1980年代、中国は、経済の改革開放という、郵小平が提出した新規蒔き直し政策を実行し、21世紀に中国経済が台頭するための足場を固めた。
最近、(世界銀行を含む)かなり多くの国際機関が、世界各国の財政・経済評定を発表している。それらの評定によれば、中国はその多元的かつ急速な経済発展によって総合的な国力を大幅に増しており、中国はすでに実に多くの分野で上位を占めているとしている。
1)中国は現在すでに日本を追い抜き、世界第2の経済大国になっている。10年以内に中国はアメリカに取って代わり、世界1の経済大国になるであろう。
2)中国本土はすでに世界1の貿易国である。
3)中国は現在すでに世界最大の外貨準備高保有国である。
4)中国本土はすでに世界1の大製造国であり、また世界1の自動車消費国でもあり、そしてまた世界1の大高速鉄道国でもある。
5)中国は世界1の携帯電話保有国でもある。
6)中国はすでに、発展途上国への投資額が最も多い国のlつであり、また発展途上国への経済援助が最も多い国の1つでもある。
7)最近のオリンピックの結果を見ても分かるように、中国はすでに一、二を争うスポーツ大国である。
このほか、最近中国は「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)発展戦略を提出し、またAIIB(アジア投資銀行)を計画・準備しているが、中国政府はこの先10年で1兆6000万ドルを「一帯一路」戦略のために投資して、ヨーロッパとアジアの地域統合を完成させるつもりでいる。AIIBについても、中国は、すべてのメンバー国による出資総額の40パーセントを出資するという最大の出資国である。
中国経済における各種の問題
中国経済の発展の速度には各国(特に発展途上国)が目を見張っているが、中国経済には依然として多くの問題がある。
- 経済の発展が非常にアンバランスで、(たとえば消耗品製造業のように)大きく進展している分野もあれば、(たとえば先端技術産業のように)決して急速な発展を遂げているとは言えない分野もある。
また、沿海地域および中国中部では急速な発展を見せているが、中心部から遠く離れた地域では相変わらずかなり立ち後れている。
- 貧富の差がますます深刻になっており、中国本土では実に多くの億万長者が生まれているが、いまなお無数の貧民が衣食にも事欠いている。
- 経済の急速な発展および国民道徳の破産が深刻な汚職・腐敗の問題を引き起こし、現在すでに、役人の誰もが汚職に手を染め、無法の限りを尽くすという事態に立ち至っている。全国各地で発生する重大な汚職・腐敗事件は数千件にも達し、ほとんど毎日その種の事件が報道されるありさまである。
また、中国経済は急速に発展しているとは言っても、中国人民の平均的な国民収入は、依然として欧米諸国との隔たりが大きい。中国人民の収入が欧米諸国のレベルに達するまでには、まだ2、30年は必要である。中国の国家資本主義は「国は富み、民は窮する」という現象を生み出しており、貧困民衆の苦境は筆舌に尽くし難いほどのものになっている。
人権を侵害し、民主化運動を弾圧する
財政と経済の分野では、中国はたしかに大きく進展しているが、人権およびその他関係各方面においては、中国の情勢は引き続き悪化の一途をたどっている。
この2年、アメリカの国務省が発表している「中国人権レポート」は、次のような指摘をおこなって中国を厳しく批判している。
- 中国公安による人権の侵害はかなり広くおこなわれている。
- 中国政府当局は中国公民の政治的権利を力づくで抑圧している。
- 中共は民主化運動を弾圧しているので、中国人民は中国政府およびその政治的言行に対する批判を表明することができず、中国の政策を変えることはなおさら不可能である。人民代表大会や政治協商会議は、決してほんとうに民意を反映できるような仕組みではなく、有名無実の組織にすぎない。また、中国にはほんとうの民主的な選挙というものがなく、各級の役人はみな、各級の中共党委員会によって決められている。
- また中共は権益保護運動を弾圧し続けているため、人権派弁護士はその役割を発揮することができないだけでなく、きわめて多くの人権派弁護士がすでに逮捕され、刑罰を科されている。
- 中共はインターネットを監視統制する新たな措置を講じている。
- 中国の司法訴訟には正当な手続きが欠けており、中国政府はNGO(非政府組織)の活動を厳格に監視・制限している。
このほか、中国には、中共およびその政府を監督・批判できるような独立したメディアが存在しない。『人民日報』や『中央テレビ局』などのメディアは、いずれも中共の統制下にあるため、人民の本音を反映させることはできず、ただ党の要求および政策を反映させているだけである。
また中共は自由・民主・人権・法治などの普遍的価値を否定しており、民主・法治の大道を歩むことがまったくできない中国では、今もなお一党独裁が堅持されている。
またアメリカの「中国人権レポート」は、中共が公民の政治的権利を抑圧していることを厳しく批判し、実例として、中共が「新公民運動」に対して採った振る舞いを挙げている。著名な人権派弁護士で新公民運動の発起人である許志永は、2013年に逮捕されたが、続いて中共は、「大勢の人を集めて公共の場の秩序を乱した罪」により、(丁家書・李蔚・衰冬・張賛成を含む)「新公民運動」のメンバーを逮捕して裁判にかけた。
許志永はすでに懲役4年の判決を受けている。国内外の世論、および世界の事情通は口を揃えて、許志永の逮捕は劉暁波事件のときと似ていると言っている。両者は共に、民主・権益保護などを主張したために中共に迫害され、また両者共、暴力によって中共政権を倒すというような行動とは無関係である。「言論によって罪を科する」のは、まったく基本的人権に違反している。
国際機関による評定
多くの国際機関は、中国の近年の財政・経済における発展をかなり肯定的に評価しているが、中国のその他の方面については実に多くの批判を提出している。
- 有名なイギリスの「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」(イギリスの週刊新聞『ェコノミスト』の調査部門で、世界各国の政治経済を分析し、調査レポートを出版する企業。民主主義指数、世界平和度指数といったような指数一覧を発表している。EIUと略称される)は、中国の自由・民主・人権の状況を、167か国中の136番目に位置づけているが(台湾は36位)、この順位は北朝鮮やミャンマーおよびアフリカなどの専制国家に伍するものとなっている。
- 国際的に名高い「フリーダム・ハウス」(本部をアメリカに置いている世界的な非政府組織。毎年、世界人権状況白書を発行している)は、中国人民の「政治的権利」は最低ランクの第7級(台湾は第1級および第2級)であるとしている。
- 国際的な「政治経済リスク評価報告」が、アジア太平洋地域の国々に投資している1300人あまりの投資家に対しておこなった、各国における司法の状況に関する評価によれば、第1位はオーストラリアであり、台湾は第7位、そして中国・ベトナム・インドネシアが最下位を占める3つの国々だった。
アメリカでは、国務省ばかりか、そのほか実に多くの連邦政府機関および民間機関も、「中共当局はチベット人やウイグル人など少数民族を弾圧し、チベットや新踵における人権状況はかなり劣悪である」として、チベット自治区や新彊ウイグル自治区に対する中国の政策を批判し続けているが、それに対して中国政府は、反論するのみならず、逆にアメリカのことを内政干渉であるとして非難している。
以上述べたところを総合すると、中国の発展の趨勢-経済は急速に発展しているが、人権は悪化の一途をたどっていること-が矛盾だらけのものであることは明らかである。中共は相変わらず「経済に対しては手綱を緩め、政治に対しては手綱を引く」という政策を実行している。
中共が提出している「法律による統治」および「憲法による統治」という政策は、一向に具体的進展を見せないまま、もはや政治的スローガンと成り果てている。
(「月刊中国」2015年9月号より)
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